「UXデザイン実践ワークショップ プラグマティックペルソナとマイクロカスタマージャーニーを作ろう」を受けて、弊社の「ペルソナ理解」が改められたのでレポート

2019年09月11日 更新 | タグ:

2019年9月7日、株式会社ツルカメの代表取締役兼UXディレクタの森田雄さんを時代工房のオフィスにお迎えして「UXデザイン実践ワークショップ プラグマティックペルソナとマイクロカスタマージャーニーを作ろう」(そのレポート)を開催しました。

時代工房でも10年ほどまえ、「ペルソナを使うといいらしい」と聞き及び、試そうとしたことがあるのですが、ぜんぜん定着しませんでした。振り返ると、定着しなかった理由は、ひとえに「ペルソナについての無理解」だったと、今回のワークショップで気づかされました。

というわけで、今回のワークショップを受けての「ペルソナおさらい」をここに残しておきます。

目次

そもそもペルソナとは

ウェブサイトを構築する際、役所や公的機関のサイトでもない限り、なんらかの「ターゲットユーザ」が想定されます。

ターゲットユーザの例
サイト ターゲットユーザの例
賃貸住宅情報サイト 新社会人、学生、新婚さん等々
旅行情報サイト 家族世帯、独身者等々
エステティックサロンのサイト 女性(場合によると年齢でセグメント化する)

こういった「ターゲットユーザ」の考え方は、抽象度が高く、「ターゲット」と言っているだけあって、発想としても、制作サイドからの視座が強く現れたものになります。

転じてペルソナは、架空の人物ではあるものの、具体的でリアルな人物像を想定します。

ターゲットユーザドリブンなIA/UX

ウェブサイト制作や企画において、ターゲットユーザを想定することの意味は、ほとんど自明といって良いでしょう。以下のような会社があったとします。

この会社のターゲットユーザは「子供/孫を持つ富裕層」です。とあるウェブ制作会社が、この会社のサイトを作るとしたら、どんなサイトを作ることになるでしょうか。

もちろんクライアントである会社の打ち出したいイメージがあるので、一概には言えませんが、たとえば「お得感」を打ち出したスーパーのチラシのような賑やかなサイトでなく、おしゃれで信用できるふうのサイトになっていくのではないでしょうか。

ウェブ制作会社のこの思考の流れは、ターゲットユーザに向けての思考の流れの例です。極言するとユーザのニーズでなく、「こういうターゲットに、こういうものを提供したい」という会社のニーズの立ち位置を取っています。

具体的でリアルな人物像を想定することの意味

ペルソナの概念は、この考えの流れを逆方向に転換します。クライアント(玩具会社)が想定するターゲットユーザに提供したいものでなく、実際のユーザが求めるものを想定する思考方法に転換します。

ペルソナを使うことで、「子供/孫を持つ富裕層」という抽象度の高いユーザでなく、とある人物を具体的に想定し、その「とある人物」がサイトと出会ったときに逃さない——確実に人物の心を掴むことを目標にした、サイトのIA/UXの設計ができるようになるのです。

仲間およびクライアントとの合意形成について

上記の例はいささか単純化した例なので、制作の現場では、そこまでクライアントの独りよがりの進行をすることはないでしょう。ターゲット設定も、実際の人物像を完全に無視したものにはならないはずです。

しかし、上記の玩具会社の広報担当者、ウェブ制作会社のディレクタ、ライター、デザイナは、それぞれ思い思いの富裕層についてのイメージをもとにサイトを作っている状態です。「なぜこのキャッチフレーズを用いるのか」「なぜこの場所にこの色を使うのか」といった決定は、制作に関係している各人の明確でない合意に基づいたものになっています。

ペルソナは、ターゲットユーザにくらべて、具体的な、ほんとうに存在していておかしくない人物を描き出したものです。ペルソナを使うということは、極言すると「ターゲットユーザが求めるもの」でなく「XXさんという個人が求めるもの」を制作していく、ということです。

XXさんは、64歳。大手商社相談役で汐留在住。子供は2人の男子で、いずれも大学を卒業後、上場企業に就職し、結婚。上の子には2人の子供があり、5歳の男の子と2歳の女の子。

自家用車はレクサスハイブリッド。スマートフォン(Android)は使うが、あまりアプリを入れておらず、家族との連絡用のLINE以外はSNSもやらない。見るテレビ番組は局を問わず報道番組のみ。新聞は日経をはじめ複数社の新聞を毎日読む。

情報技術にさほど明るくなく、スマートフォンは電話会社の勧めに従うまま購入。家にはノートPC(Windows)はあるが、インターネットをするのは主に奥さん。奥さんはFacebookをそれなりに使いこなし、インターネットでの情報収集や買い物をするが、孫への贈り物は、かならずXXさんに相談する。

政治的立場はリベラル寄り。

テレビドラマは見ないが、司馬遼太郎を好んで読み、日本の時代劇の映画を見るのが好き。

ここまでやっておいて、いまだ「XXさん」だと味気ないので、ちゃんと名前をつけましょう。「河田邦弘(かわたくにひろ)」さんとします。

こういったペルソナを2〜3体用意し、「子供/孫を持つ富裕層」に向けてサイトを作るのと、「河田邦弘さん」ほか2体に向けてサイトを作るのとを比べてみれば、クライアントおよび制作チームの意思決定がスムーズになることは間違いありません。このようにペルソナをもちいることで、この「明確でない合意」を「明確な合意」にします

以上

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